「丸暗記」では続かないー大人の強みを勉強に活かすには?


大人になってからも勉強している人達がいます。今の仕事のために必要だから勉強している人や、今後の可能性を広げようと考えて勉強している人、単に「知りたい」という欲求から勉強している人など、事情は様々ですが、今のような変化の時代では、社会に適応していくために勉強し続けていく姿勢がより重要なのかもしれません。

私の友人でも、社会人としてのキャリアを中断して勉強に専心している人がいます。その友人の悩みは勉強すべきことを「暗記しきれない」ということでした。


その友人の記憶力は特に悪いわけではなく、むしろ中学・高校時代は暗記力を頼りに学年上位の成績を収めていたほどなので、人並みより優れているといって良いと思います。

それが今になって「暗記しきれない」というのには、どんな理由があるのでしょうか?一つには、勉強する内容がより広範、あるいは難解になっている可能性があるということがあります。しかし、もっと大きい理由としては、「前ほど暗記できなくなってきている」ということが挙げられると思います。

これは私の友人に限らず、私自身やその他大勢の人達に当てはまると思いますが、大人になり年齢が上がっていくにつれて、段々と新しいことを丸暗記することができなくなってきます。

このことは進化論的に考えれば自然なことで、幼い頃は環境に適応する必要性が高いためにより新しいことを吸収しやすく、一方で大人になると環境への適応能力がついてくるため、「行動パターンの維持」がより生存にとって重要になってくると考えられます。行動パターンの現状維持のためには、新しいことを記憶する必要性はあまりなく、むしろ記憶が邪魔になることもありえます。

そのため、子供の頃のように「丸暗記」に頼ろうとしても、どうしても通用しなくなってくるのです。それでは、大人になってから勉強することは不利なのでしょうか?私は工夫次第でむしろ「大人の強み」を勉強に活かすことができると考えます。

知力の中で大人になって増していくものは何でしょうか?それは既に身につけた記憶=頭の中の引き出しの数です。

例えば、子供と大人で比べた時、有名人の出身地を大人の方がよく覚えている、といったことがあります。「この人はどこそこの出身で、小さい頃こういう経験をして、今はこうなっているんだよ」といったことを大人が話しているのを聞いた覚えはありませんか?これは、地域に関する知識やイメージについて大人の方が多く引き出しがあり、有名人と出身地を結び付けて覚えやすかったためだと考えられます。

丸暗記ではなかなか覚えられないことでも、既に知っていることと関連づけると覚えやすくなります。大人になると既に知っていること=頭の中の引き出しが多くなるため、その引き出しと新しい知識を関連づけて覚えやすくなります。地域に関する知識をもとに人物を特徴づけて覚えるなどはその代表例です。

私の場合、引き出しの一つに将棋があるため、例えば19という数字は香車の初期配置の場所をイメージすると視覚的に覚えることができます(将棋は9×9の81マスに全て番号がつけられています)。

このような関連づけは引き出しの多い大人にとって強みを活かす勉強法になるといえます。丸暗記で行き詰まったら、自分の引き出しを点検して、今勉強していることと関連づけられることがないか探してみてはいかがでしょうか。