コピーライティングにおける5P

ウェブマーケティングにおいて欠くことのできないのが、コンバージョン(成果)につながる文章を書くコピーライティングです。コピーライティングに関する書籍は多くありますが、ここではカリフォルニア大学デービス校でオンライン講義を実施しているcopybloggerの資料 “The 5 P Approach to Copy that Crushes It” から、コピーライティングにおける5Pについて紹介します。

コピーライティングにおける5Pとは?

マーケティングでは、AIDAやAISASなどの顧客の態度変容の考え方を用います(下記)。

AIDA
Attention(注意) ⇒ Interest(興味) ⇒ Desire(願望) ⇒ Action(行動)
AISAS
Attention(注意) ⇒ Interest(興味) ⇒ Search(検索) ⇒ Action(行動)
⇒ Share(共有)

このような考え方によって顧客の態度変容をいくつかの段階に分けることで、どの段階の顧客にどのようなモノ・コトを提供するかを考えるのが一般的なマーケティング手法です。

copybloggerは、コピーライティングにおける5PをこのAIDAやAISASに代わる考え方として提示しています。

5PとはPremise、Promise、Picture、Proof、Pushの5つのPから始まる単語のことを指します。以下、順にみていきましょう。

①Premise

Premiseは通常の訳としては「前提」となりますが、ここではやや特別な意味をもっているため、「良いコピーを生み出す”もと”になるもの」と理解するとよいと思います。

Premiseは5Pの中でも最も重要で、資料の多くのページがPremiseの説明に充てられています。以下、その中でも端的なPremiseの説明を引用します。

“In other words, the premise is the concept that weaves itself from headline to call to action, tying everything together into a compelling, cohesive, and persuasive narrative with one simple and inevitable conclusion — your
desired action.” (p8)

(日本語訳)「言い換えれば、Premiseとは見出しから行動喚起の箇所までの全ての部分を、「望ましい行動」という一つのシンプルで必然的な結論をもつ話へと結びつけ、編み込むような概念である。その話は、有無を言わさず、まとまっていて、説得力のあるものになる。

また、copybloggerはPremiseをUSP(Unique Selling Proposition=自社だけが提供できる独自の強み)と似ているものだとも説明しています。Premiseの説明にnarrative(話、物語)が含まれていることやその他の資料を確認すると、USPに比べて、Premiseはより物語的・感情的な概念になっているといえます。

やや込み入った説明になりましたが、5PにおいてPremiseは根幹となるコンセプトであり、良いコピーを書くには、良いPremiseを生み出すことが重要となります。

それでは、良いPremiseを生み出すにはどうすればよいのしょうか?copybloggerは、良いPremiseは創造的なものであり、生み出すための公式はないとしています。しかし、実際に存在する「良いPremise」を見ると、そこにはいくつかの共通点もあると言います。その共通点とは、

  1. unpredictable(予見できない・意外性がある)
  2. simple(単純明快・シンプルである)
  3. real(読者にとって関係が深く意味を見出せる、感覚的に分かりやすい)
  4. credible(信用できる・信ぴょう性がある)

の4点です。このうちrealについてだけ説明すると、例えば600mlの水というよりもコップ4杯分の水といった方が伝わりやすいといったことがrealに当たります。

これら4点を満たし、顧客の世界観、価値観、言葉遣い、置かれた状況にピタリとはまるようなPremiseが良いPremiseであるといえます。

②Promise

Promiseは「約束」を指す語ですが、ここでは「顧客に対して示す約束」という意味で用いられています。それでは、顧客に対して示す約束とは何でしょうか?

一般に、商品やサービスを使えば、いくつかのメリットが得られます。そのメリットには大きいものも小さいものもありますが、Promiseで顧客に対して示す約束とは、その商品・サービスを通じて得られる「究極的な利益」です。そして、その究極的な利益とは「自由」だとcopybloggerは説明します。

コンビニを例に挙げましょう。コンビニが提供するメリット・利益には、美味しいお菓子やパン、お弁当を朝早くでも夜遅くでも買って食べられるということがありますが、それは結局のところ、活動時間を選ぶ必要がない、つまり、究極な利益として「時間を自由に使えること」があるといえます。

コンビニに限らず、顧客に対して示すPromiseが最終的には「自由」となる、というのはさほど想像に難くないと思います。

ちなみに本稿の趣旨から外れますが、Premiseと同列にPromiseが並ぶというのは個人的にとても味わい深いように感じます。両者はスペルが似ているだけでなく、語のつくりも同じであるからです。どちらも「pre/pro=前に」「mise=置く」という部分から成り立ち、語源的に「前に置かれるもの」を意味しています。本稿での両者の意味は大きく異なりますが、語源から見ると、親戚同士が並んだという印象を受けます。

③Picture

Pictureはもともと絵、写真の意味ですが、ここでは「鮮明に呼び起こされる視覚的な情景・イメージ」といった意味で用いられています。目の前に映し出されているかのようにありありとした描写、それが自然と顧客の頭に浮かんでくることがコピーライティングで重要なのは、敢えて説明する必要もないでしょう。

④Proof

Proofは証拠、根拠という意味です。顧客の行動を促す上では、感情的に訴えかけるPictureの方が力強いですが、だからといってProofが欠ければ胡散臭い単なる煽りでしかなくなります。実際に呼び起こされた感情が実現できると信じるに足るデータ、論証、根拠を示すことは手間はかかりますが、しかし必要なことです。

⑤Push

最後はPush、これは「最後の一押し」といった意味合いです。Premise、Promise、Picture、Proofが揃えば、顧客が商品・サービスを利用しようという欲求は既に十分に高くなっています。しかし、最後に「あれっ」と怪訝になるようなことがあれば、その意欲が一気に冷めることも起こりえます。

一貫性のあるメッセージをもって顧客にしっかりとした行動喚起をすることは、コピーライティングで最終的に成果を上げるには重要です。


以上、コピーライティングの5Pについて紹介しました。Premise・Promise・Picture・Proof・Pushに分けて自分のコピーを見直す、あるいは優れた他人のコピーを分析することで、また新たな発見・気づきが得られるのではないかと思います。

参考:“The 5 P Approach to Copy that Crushes It” copyblogger.