WEBマーケティングにおける施策の一つにSEOというものがあります。SEO(Search Engine Optimization; 検索エンジン最適化)はYahoo!やGoogle、Bingなどで提供される検索エンジンを通じてユーザーを集客しようとする一連の施策で、特に検索連動型広告(検索結果の上位などに出てくる広告のこと)以外の通常の検索結果でよりサイトが表示され集客できるようにすることを指します。
表示順位を上げるために、これまでSEO業者やウェブ担当者は検索エンジンの順位決定ロジックを分析し、そのロジックに適するようページを変更することで集客を増やしてきました。特に月間検索数が多く何らかの売上に繋がるキーワードの場合、上位に表示することで見込まれる効果も高いため、各社が熾烈な競争を繰り広げました。
例えば、ページ中のキーワードの含有数が順位にとって重要だとなれば、ページにそのキーワードをできるだけ多く詰め込もうという手法が広まりました。中には、普通に訪問してきた人には見えないようにキーワードを大量に詰め込むといった、かなりスパム的な手法(隠しテキストといいます。参考:Googleウェブマスター向けガイドライン「隠しテキストと隠しリンク」)を行うSEO業者(ブラックハットSEO業者)もいました。
そのような中で、「精度が高い」と評判になり、検索エンジンの中で一躍トップシェアを獲得したのがご存知、Googleです。そのきっかけとなったのは、PageRankという仕組みです。PageRankは、他のサイトからリンクされることでそのページの品質を図る方法で、論文の被引用回数をもとに算出するインパクトファクター(IF)と通じるランキングアルゴリズムです。
このような仕組みや、その他の改良によって、Googleはユーザーに最も支持される検索エンジンになりました。「ググる」という言葉も登場し、Googleは多くの人の日常に溶け込んでいきました。
しかし、このようなアルゴリズムの改良に対しても、順位をとにかく上げて成果に繋げようとするブラックハットなSEO業者は手法を変えて対抗してきました。他のサイトからのリンクが評価されるのであればリンクを自作自演し、サイト内のコンテンツ量が重要となればコンテンツの量産を行うといった具合です。
これに対して、Googleはアルゴリズムのアップデートや手動のペナルティなどを実施し、スパム的な手法で順位を上げようとする業者への対策を施してきたものの、巧妙になっていくSEO業者の手法に今も躍起になっている状態です。最近のWELQ問題やフェイクニュースへの対応もその一例と言えます。
私は一企業のウェブ担当者としてSEOを知ってから6年以上経ちます。上記のようなGoogleとブラックハットSEO業者の争いも数多く見聞きしてきました。
そろそろ、このようことは終わりにする必要があると思います。いえ、正確に言い直すと、現状を冷静に分析してみれば、ブラックハットSEO業者はもう終わりです。
スパム的な手法はどんどん巧妙にはなってきてはいますが、それはスパムをすることに対するコストが増えてきていることを意味します。加えて、GoogleのアルゴリズムはRankBrainと呼ばれる人工知能も用いて加速度的に変化し、複雑になってきています。このことは、他サイトからのリンクの自作自演など、単一のスパム手法による効果を限定的にしています。
さらに、ブラックハット業者が苦労して得たスパム手法が一時的に順位上昇に効いたとしても、Googleのアルゴリズムの変化に伴い、効果が長続きしなくなってきているといえます。もっといえば、そのような手法は手動ペナルティにより却って順位を落とす結果になることもあります。
そもそも、人工知能の成長は、指数関数的なものです。人間が想像しやすい右肩上がりとは次元が違うといってもよいほどの速度で進化していきます。Googleの検索エンジンも然りです。このことは、ブラックハット業者のスパム的な手法の可能な範囲が指数関数的な速度で狭まってきていることを意味します。
以上のことを考慮に入れれば、ブラックハットSEOは費用対効果の面からも、事業としての有効性の面からも、未来がないことがわかります。上記のことを把握していて正常な判断力のあるウェブ担当者なら、今後意思決定としてブラックハットSEOに手を出すことはないでしょう。
そろそろ、全てのウェブ担当者は本当のSEOに取り組まなければなりません。本当のSEOは、Googleのアルゴリズムに合わせるのではなく、Googleが向かう先、つまり検索ユーザーに照準を合わせます。もちろん、Googleはユーザーそのものではないため、Googleに適切に情報を伝えるための一定の技術的な知識は必要です。
しかし、それ以外で重要なことはたった一つ、「ユーザーはなぜそのように検索したのか?」「検索ユーザーが必要とすることは何か?」を考え抜き・調べ抜き、そのユーザーに対する”最強の答え”を提供しようとすることです。実際に”最強の答え”が存在するわけではありませんが、それでも目指していくことが重要です。
これはGoogleが目指している方向でもあります。Googleは検索エンジンだけでなく、メディアやデバイスも多様化させて、様々なユーザーの様々な検索に対して最適解を出そうとしています。このようなGoogleの方向性は、検索ユーザーに真摯に向き合おうとするウェブ担当者にきっと味方してくれるでしょう。
検索エンジンのロジックやデバイスが変わっても、その先に何かを検索する人、探し求める人がいるということはこの先も変わりません。その人達に”最強の答え”を提供するべく、ウェブ担当者はこれから地道に、真摯に、邁進していきましょう。